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窓際エンジニア(仮)の日常

おすすめのレンタルサーバのご紹介

この記事は「低予算でも闘う企画担当者の為の鎮魂歌 Advent Calendar 2015」の3日目の記事です。
 
前回は昨今のレンタルサーバ事情とレンタルサーバの積極的な利用について説明しました。
今回は実際に私がおすすめするレンタルサーバについておすすめする理由と利用上の注意などをお話したいと思います。

おすすめのレンタルサーバ

まず、結論からお伝えすると現時点で私がおすすめするレンタルサーバは「さくらのレンタルサーバ(スタンダードプラン)」と「コアサーバー(CORE-A)」の二つです。
 
もともとは「さくらのレンタルサーバ(スタンダードプラン)」をおすすめに選んでいたのですが、2015年10月1日よりコアサーバー及びバリューサーバーでもさくらのレンタルサーバ同様にSNIを用いた独自ドメイン環境のでSSL証明書の利用が無料で提供されるようになりました。
これによりさくらのレンタルサーバに優位性のあった部分が失われ、一方でさくらのレンタルサーバには幾つかの致命的な問題も抱えている事情もあり、暫くの間いろいろと比較してみたのですが何れかに決定するだけの要素は見いだせず、その結果「さくらのレンタルサーバ(スタンダードプラン)」と「コアサーバー(CORE-A)」の何れかをそれぞれの特徴を確認し選んでご利用いただくという事が適切であると判断しました。
 
なお、想定する利用シーンとしては例えば会社サイトを作成しお問合わせフォームを準備したり、また取引先との間で簡単なデータをやり取りするアプリケーションを構築したり、部門内で利用する簡単な業務アプリケーションのような比較的軽微なアプリケーションの設置を含むものを想定しており、それ以上の規模や条件(例えば取り扱いが難しいデータの利活用や共有サーバでは処理しきれない負荷のプログラムの実行等)の場合は、VPSやクラウドサーバを利用すべきと判断しますので、あくまでもその前提でのお勧めという意味で読んでいただけると幸いです。

各サービスの比較

まず両サービスとその他のサービスを機能面から比較します。

(1) 独自ドメインの利用に関する比較



サービス名


プラン
マルチ 
ドメイン
対応  
    
ドメイン
利用数 

メール  
アカウント
さくらのレンタルサーバ スタンダード 20個 無制限
コアサーバー CORE-A 無制限 無制限
エックスサーバー X10 無制限 無制限
ロリポップ スタンダード 100個 無制限

さくらのレンタルサーバでは利用可能ドメイン数が20個に制限されています。
1アカウントで複数のドメインを取り扱うようなケースではデメリットとなりますが、通常の利用においてはそれほど制限とはならないでしょう。

但し、独自ドメイン環境下でのメールアカウントについてはさくらのレンタルサーバのみ特殊な制限があります。
さくらのレンタルサーバでは作成するメールアカウント名はサーバ上で共通したものとなります。その為、例えば「orepedia.com」ドメインと「orepedia.net」ドメインの両方を何れも同じアカウント上で管理しており、例えば「example」というメールアカウントを作成する場合、それぞれのドメイン毎のメールアカウントとして作成する事はできません。
その為、メール受信時には「example@orepedia.com」と「example@orepedia.net」は同じメールボックスにて管理される為利用時には注意が必要となります。

(2) 独自ドメイン環境下でのSSL証明書の利用に関する比較


サービス名

プラン

SNI対応
証明書の持込
及び持出  

利用料金
さくらのレンタルサーバ スタンダード 0円
コアサーバー CORE-A 0円
エックスサーバー X10 × 0円
ロリポップ スタンダード

さくらのレンタルサーバとコアサーバーについては何れもSNIを利用した独自ドメイン毎のSSL証明書の利用を無料で提供しています。
一方で、エックスサーバーについてはSNIを利用した独自ドメイン毎のSSL証明書の利用を無料で提供していますが、利用できる証明書は同社のサービス内で取得したものに限られます。
ロリポップに関してはSNIを利用した独自ドメイン毎のSSL証明書の利用に対応していません。

(3) アプリケーション実行環境に関する比較

サービス名 プラン MySQL SQLite PHP Ruby Python
さくらのレンタルサーバ スタンダード 20個
コアサーバー CORE-A 無制限
エックスサーバー X10 50個 × × ×
ロリポップ スタンダード 30個

エックスサーバを除くと基本的に横並びの状態です。
データベースの作成数に差はありますが、そもそもレンタルサーバ上で利用する程度のデータベースですので20個でも通常は十分であると思われます。
おそらくデータベース数の作成数の制限をうけるような状況の場合、負荷制限(データベースへの同時接続制限等)の方が深刻である事が予想されますので、サービスやサイト毎に別契約とするか、またはレンタルサーバではなくVPSやクラウドサーバを選択する必要があると考えるべきでしょう。

(4) 利用料金に関する比較

サービス名 プラン 初期費用 単月 1年契約 2年間累計
さくらのレンタルサーバ スタンダード 1,029円 515円 5,142円 11,313円
コアサーバー CORE-A 0円 515円 5,142円 10,284円
エックスサーバー X10 3,240円 1,080円 12,960円 29,160円
ロリポップ スタンダード 1,620円 648円 6,480円 14,580円

※全て税込(8%)の表記に統一
※エックスサーバーは3ヶ月単位の契約

利用料金についてはエックスサーバーを除くとそれ程変わらないことがわかります。
その為機能面の差異で選択すればそれほど問題にはならない事がわかります。

コアサーバの問題(なぜコアサーバー一択ではないのか)

ここまでの比較を見るとコアサーバーの条件がもっとも優れておりさくらのレンタルサーバが対抗馬になる余地はありません。価格的にも機能的にも微妙にコアサーバーがすぐれている点は明らかですので。

しかしコアサーバーにも幾つかの欠点があります。
 
一つは同居しているユーザーによりプログラムの応答やデータベースの挙動に影響が出る点。これは回避策はあるもののいわゆる地雷鯖と呼ばれるものが比較的多く存在する為外れを引くと特定の時間帯になるとエラーが続発することとなります。私はサービス開始時点からずっとコアサーバーを利用しており3回程サーバ移転をしつつ利用してきましたが、地雷鯖にあたると22時頃を中心に全うに動的コンテンツを表示する事は出来ないほどの状況に陥りました。
但し、最近では当時ほどの地雷の話を聞くこともなくなりましたのである程度収まっているのかもしれませんが、そういった可能性があるという事はマイナスポイントの一つです。
なお、この話は他のレンタルサーバでも同様で当然さくらのレンタルサーバでも同様の問題に遭遇する事もありますが、コアサーバー程致命的な状況に陥る事は少ないようです。
 
もう一つは午前4時前後のサーバの状態が常に不安定になる事です。
その時間帯の重要性はさほど高くはないかもしれませんが、この現象は私が利用したサーバの全てで起きていましたのでコアサーバーの共通する問題(現象)のようで回避する方法はありません。
具体的には同時間帯になると動的コンテンツの表示ができなかったり、またSSH経由の接続ができない、管理コンソールに接続できないなどおそらくはサーバ側で何か決まった処理が動いているらしくその時間帯は必ず不安定な状況に陥ります。その為、一応24時間サービスを提供する前提であるウェブコンテンツの器としての評価は若干下がるという点は否めません。
 
そして最後は比較的大きな仕様の変更(良いものも含む)が比較的頻繁に行われる(行われた)という点です。
前述の通り私はXREAから始まりコアサーバーサービスが開始されてから今日までずっと契約をし利用してきました。この間サーバの仕様変更は数回行われ環境設定の方法の変更やプログラム実行環境の変更等幾つか動作に影響を与える規模の変更も行われました。
変更そのものはどのようなレンタルサーバでも起きうることですが、もう一つ付け加えるならば警備なバージョンアップ作業の際も結構な頻度でバージョンアップエラーの影響で動的コンテンツが動作しないという状況にも陥ります。このあたりはサーバーの仕様や運用体制等の影響もあるのでしょうが、ちょっと不安定さを感じるというのが本音です。
 
もっとも、値段と提供するサービスを考えればこの程度の欠点は十分許容範囲内で目くじらを立てるほどの問題ではありません。ですのでコアサーバー自体も十分魅力的でコスト的にも機能的にも選択して損の無いサーバである事に変わりはありません。

さくらのレンタルサーバーのメリット

一方でさくらのレンタルサーバーにはオンリーワンといえる機能がいくつかあります。
 
一つはリソースブースト機能です。
この機能は例えばプレスリリースの発信やメディアでの紹介などにより一時的にトラフィックやトラフィックの増加に伴うサーバ負荷が高まった際に、サーバ側での動作制限を一時的に緩和し処理可能な状態としてくれるオプション機能です。
連続的に利用する事はできませんのであくまでも一時凌ぎではありますが、一般的にはそういったトラフィックは継続的なものではありませんので十分効果的な機能であるといえます。
 
もう一つはWAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)機能です。
この機能はシグネチャ検査・セッション管理などの検査を実施し、それらをもとに攻撃にあたると判断したアクセスを遮断を自動的に遮断してくれるものです。
利用可否の判断は若干複雑でコンテンツやドメインの利用状況にも左右されるのですがこういった機能が提供されるという事はメリットの一つであると言えます。
 
最後に国外IPアドレスフィルタも紹介します。
基本的に多くのウェブサイトへの攻撃は海外経由で行われます。その為、動的コンテンツを提供する場合の多くは必要ない場合は海外からのアクセスを最初から遮断してしまう事も少なくありません。
この機能はそういった設定を簡単な操作で有効にすることができ、海外IPアドレスからのアクセスをブロックする事ができる機能です。手動で設定を準備し行う事も当然可能なのですが、アドレスリストの管理も含め自動的に行えることはやはりメリットの一つであると考える事ができます。
 
なお機能面ではありませんが個人的な意見として添えるなら、さくらインターネットのユーザーサポートに対しては私は好印象を持っています。
解決できない問題(仕様の為、という回答)も比較的多いのは否めませんが、メールサポートやチャットサポートだけでなく電話でもサポートを受け付けコミュニケーションが図れるという点は特にビジネスでの利用ではメリットであると言えます。
もしもサポートにもある程度の質を要求するのであればこの点は評価に含めて検討してもよいかもしれません。

このようにさくらのレンタルサーバにはオンリーワンというえる機能が毎年増えていることもあり、そういった意味で多少のサービスの差異程度であれば候補から除外する必要はないレベルのサービスです。

そんなさくらのレンタルサーバにも致命的な欠陥がある

さてそんなさくらのレンタルサーバですが、致命的ともいえる欠点があります。
 
まず一つは独自ドメインに関する設定がDNSの設定後でなければ行えないという点です。
ある意味ウェブサーバとしては致命的すぎるのでなぜこの問題を放置し続けるのか理解はできないのですが、この問題がある為に本格的に公開・運用しているコンテンツをさくらのレンタルサーバーに移転させ際は一時的にコンテンツを停止せざる得ない状況に陥ります。 この問題は別の記事でもう少し詳しく説明しますが、他社と比較してこの点は大きく減点されるのは避けられません。
 
もう一つはSNIを用いたSSLの実装が微妙であるという点です。
単体で利用する場合は回避方法もあるのですが、例えばCDNサービスと連携する場合のようにSSL経由のアクセスを外部と連携して提供する場合は比較的致命的な問題も発生します。
もっとも実際にこの問題が発生するのは特定の条件でのみとなりますので大きな減点とまでは言えませんが、SSLの利用は今後重要性を増す事を考えるとその環境が特殊であるという点は減点対象にはなるでしょう。
 
このようにメリットも多いさくらのレンタルサーバですが、それと同じぐらいデメリットもあるというのが現実です。

まとめ

このようなこともあり、結局のところ「さくらのレンタルサーバ(スタンダードプラン)」と「コアサーバー(CORE-A)」の二つはそれぞれの特徴を理解してどちらが自分に合っているか判断する事が重要です。 
若干煮え切らない答えではありますが、もしもレンタルサーバを利用してみようと思われた方はいずれかのサーバを候補にしてみてはいかがでしょうか。 
 
さて次回の4日目は本記事でも触れたさくらのレンタルサーバで発生する独自ドメイン利用時に発生する問題について少し詳しく説明したいと思います。