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窓際エンジニア(仮)の日常

VPSサービスの利用(「ConoHa」の特徴)

この記事は「低予算でも闘う企画担当者の為の鎮魂歌 Advent Calendar 2015」の11日目の記事です。
 
※本記事は実際の予定より遅れて投稿(12月16日)しております
 
今回はVPSサービスについて少し整理してみます。
 
さて数年前ですと、安価でそれなりのVPSを利用する場合は海外製のサーバを調達し利用する事も少なくありませんでした。
一番の理由は自由度とコストで設置場所が海外であるデメリット(コミュニケーション、安定性、レイテン等)を許容できるのであれば現実的な選択肢の一つでした。
 
しかし2008年に登場したさくらのVPSあたりから国内VPSは海外VPSと比較して安定性もコストも十分なものとなり、現在では特別な事情がない限り国内VPSの利用が当たり前の状況となっています。
そして、近年では単体サーバでのサービス構築だけでなく、ローカルネットワークやバックアップ、ロードバランサーなど様々な付加サービスも提供されており、一定の規模のサービスであればクラウドサーバを必要としない程のレベルまで成長しています。
 
以前の記事で昨今のレンタルサーバは優秀と書きましたが、コスト的な問題や構築の手間を許容できるのであれば実はVPSはレンタルサーバよりも優秀な選択肢となる事もありえます。
今回はそんなVPSについて少し整理をしていきたいと思います。

国内VPS事業社の状況

国内のVPSサービスを提供する事業社で私が理解しているものは以下の通りです。

提供会社 サービス名
さくらインターネット さくらのVPS
GMOインターネット ConoHa
GMOインターネット Z.com Cloud VPS
GMOインターネット お名前.COM VPS
NTTPCコミュニケーションズ WebArena VPSクラウド
ドリーム・トレイン・インターネット ServersMan@VPS
カゴヤ・ジャパン カゴヤ・クラウド/VPS

まだまだ沢山のVPSサービスがありますが、私が現状認識しており定期的にチェックしているのはこのあたりです。

例えばGMO系ですとWEBKEEPERやラピッドサイト、他にもABLENETや使えるねっとなどもありますが、何れも今回は比較対象からはずしています

以前からVPSサービスそのものはありましたが加速度的にサービス価格の低下とサービスの向上が図られたのはやはりさくらインターネットのVPSサービスが登場してからだったと記憶しています。
その影響で多くのサービスがここ2年〜3年の間にVPSサービスの見直しを行い、以前の口コミを鵜呑みにしてしまうと全然状況が違っているということも少なくありません。
 
また個人的な感覚として近年はGMO系が類似サービスを沢山立ち上げたりまた買収する傾向もありふたを開けると実は同じ運営母体だったと言うこともありますので、例えばDR目的でブランチを作成する場合は、しっかりと運営母体やそのインフラの状況を確認しなければなりません。  

例えば私の場合はConoHaのブランチとしてZ.com Cloudを検討しましたが、サポートへ問い合わせたり周囲から情報を集めたりした結果、実は運営会社も運営体制も別物として考える事は難しいという結論にいたりました

さてこのような状況ですが、個人的に多用するサービスとしては「さくらのVPS」と「ConoHa」が最近ではもっと利用実績が多いサービスとなっています。 それぞれ特徴がありますので利用用途に応じて選択する事が望ましいですが、私の場合は専ら最近では「ConoHa」を利用する事が続いています。   今回はそのあたりの事情も踏まえながら「ConoHa」と「さくらのVPS」の比較をしてみたいと思います。

「ConoHa」の特徴(メリット)

さて「ConoHa」についてはもう溢れる程記事が上がっておりいまさら説明するまでもありませんが、簡単に幾つかの特徴について紹介したいと思います。

① VPSでありながら時間単位の課金

まず最初に来るのはやはり時間単位の課金でしょう。
VPSサービスの難点は多くのサービスで少額とはいえ初期費用がかかる点とサービスの契約が月単位である事です。
「さくらのVPS」の場合、2週間の無料お試しがありますのでその期間を活用する事で環境の評価にあてる事も可能ですが、柔軟に規模を操作する事には向きません。
その点「ConoHa」の場合は、全てのサービスが初期費用無料で時間単位の課金(一部オプションを除く)ですので、サーバーの増減も途中で用途を変更するなども非常に柔軟に行う事が可能です。

② クラウド並のオプション提供されている

2つめの特徴はクラウド並に様々なオプションが提供されていることです。
例えば複数台のWEBサーバを使いそれらへのアクセスをバランシングしたい場合は簡単にロードバランサーの利用ができます。
またはもしも本格的な(柔軟性の高い)データベースを必要としない場合はアプリケーションサービスとしてデータベースサービスも提供されています。
その他にもマルチリージョンが利用可能であったり、それを生かすようにGeoDNSが提供されていたりとVPSとは思えない程のオプションが提供されています。
もっとも何れもVPSですので自ら構築すれば実現は可能ですが、コントロールパネルからの簡単な操作のみでそれらが利用できるというのは非常に心強いです。

③ サーバ側にIPアドレスを複数割り当てることができる

単純なサーバ用途ではそれほど重要性はないものの、突然「使いたい」と思ったときに実はこのオプションが全然ないんですね。
外部からのアクセスを捌く為の環境を構築する事は想定されているものの、サーバーそのものが複数のIPを利用する事を意識したサービスは片手で数えるほどしか存在せずその点でも非常に便利なサービスです。

このように比較的他のVPSサービスとは一線を画しており、ポジショニング的にはVPSとクラウドの間といったところを目指しているのではないかと感じ取れます。

「ConoHa」の微妙な点

一方で、死角がないように見える「ConoHa」ですが気をつけないといろいろな所に落とし穴が有ります。
多くのものは確りと評価したり、またサポートやドキュメントを確認する事で回避できますが、次の点はあらかじめ意識した方がよいでしょう。

① ドキュメントが中途半端

もう最大の難点はこれにつきます。
多くの機能やサービスを提供しているのですがそれらに対する十分な説明がありません。
例えば「バックアップ」機能は提供されており料金表には「自動バックアップ/300円/月」となっていますが、正しくは「300円/月から」となります。
これは容量に応じて増加するという基本的な話ではあるのですが、その仕様はどこにも書かれていませんし、実際にサーバを設定する際も「有効/無効」しかバックアップの設定には記述はありません。 その為料金表を見て仮見積もりを作りプロジェクトを進めてしまうとあとからバックアップ予算が足りない、ということも発生してしまいますのでオプションの見積りは必ずサーバー追加画面で操作しながら確認する事が重要です。
 
こういった単純なものはまだ良いのですが、逆にバックアップを契約したとしてどのようなタイミングでどのように行われるのか気になりませんか?
しかしその点について詳細なドキュメントは存在せず唯一の記載は「お客様ごとに異なるタイミングで1週間に1回取得」との一文のみです。時間の指定もありませんしタイミングもわかりません。長引く構築作業だった場合はどの時点のバックアップが行われるかこれは運命に委ねるしか有りませんね・・・。
これ以外でもロードバランサーの死活監視の仕組みの仕様であったり、その他追加IPアドレスの採番ルールであたったりと様々なものがドキュメントとして不足しており結構悩みどころではあります。

② 旧サービスのドキュメントと新サービスのドキュメントが公式で混在している

公式の技術ブログでは当然以前の情報も掲載されている事は止むを得ないと考えます。
ただその場合は旧サービスのドキュメントから新サービスのドキュメントの誘導であったり、記事を新サービスを前提に新しく書き起こすなどフォローが必要です。
例えば、2015年1月に作成されたプライベートネットワークを利用する記事では「1〜10は管理用に予約されていて、使用できませんので注意してください」とありますが、既に新サービスではそのような制限はありません。
一方でドキュメントには記載がありませんが、OS上で新しいインターフェースを追加する場合は自動的に割り当てが行われるIPを事前にコントロールパネルで確認し、その上で設定が必要になるのですが、旧サービスと新サービスでは任意と自動の違いがあるにも関わらずその説明は新しく書き起こされた記事でも触れていません。
 
このようにドキュメント自体が中途半端なだけでなく、新・旧のサービスの仕様の違いを吸収するどころか、むしろ混乱するドキュメントが散乱する状態というのが実情です。

③ 運用面がそれほど考慮されていない

結構痛いのですが運用面はあまり考慮してくれていません。
例えば先ほどのバックアップもそうですが、タイミングの指定はできませんので本格的な利用はできません。結局自分でバックアップロジックを実装する方が現実的です。
他にも先ほど記述したとおりロードバランサーであればHTTPを用いた死活監視のルールが明らかでないだけでなく、ロードバランサーから見た場合の各ノードの認識状況を確認する術もありません。その為、仕様を確りと確認して運用しないとバランシングが意図した形になっていない事も発生し、それを確認するにはログや確認する為の仕組みを自ら準備するしかありません。

このように地味ではありますが、結構致命的なものについて不足していたりしますのでこの点は注意が必要です。
 
もっとも「ConoHa」は今年リニューアルが行われましたのでこのような状況が発生していると言うこと自体にはある程度理解はできます。
ただそろそろリニューアルから半年経ちましたし、年も新しくなることですから・・・

今後このような点について改善が進むと利用者として非常にうれしいですので、この記事を通じて是非改善が進んでくれることを期待しています。

メリット・デメリットについて簡単にご紹介しましたが、あきらかに「ConoHa」の満足度は私の中では高く、不足する情報や機能については中の人の今後の対応に期待しつつ利用を重ねることで仕様面については理解を深めれば多くのデメリットは比較的安易に解消する事が可能です。
一部の機能だけを見ると代替できるサービスもありませんので、多くのVPSサービスの中で利用経験を重ねてもよいサービスの一つであると私は思います。
 
次回は実際に「ConoHa」でサーバを立ち上げる部分について幾つか実例を交えながら紹介を続けたいと思います。